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痛信vol．104「“椎間板ヘルニア”に“硬膜外ブロック”がよく効く」、「卵が先か鶏が先か、痛みが先か不安が先か」

「“椎間板ヘルニア”に“硬膜外ブロック”がよく効く」

1.椎間板ヘルニアとは？

日本人の40歳以上の3人に1人が悩んでいるといわれている腰痛。その主犯格と考えられてきた「腰椎椎間板ヘルニア」は、無実のケースが多いことがわかってきました。椎間板ヘルニアは腰骨の間のクッション材である「椎間板」が変形して飛び出し神経を圧迫する病態をさします。但し、画像診断でヘルニアが確認されたとしても、それがすぐ症状に結びつくとは限らないことが知られ、長い間、無症状のまま、ヘルニアが自然消滅、あるいは縮小する場合もあります。椎間板ヘルニアと言うと、すぐ手術と思いがちですが、実際は手術が必要な「病的なヘルニア」はごく少数で、画像検査で椎間板ヘルニアが確認されたとしても、病的な痛みに結びつくとは限りません。検査画像にショックを受けて、急いで手術を受けたいという患者様もいらっしゃいますが、本当にヘルニアが痛みの原因か、医師とよく相談しましょう。

2.ヘルニアに手術より硬膜外ブロックが有効な理由

前述の通り、ヘルニアが痛みの原因でない場合も多々ある上、手術は切開や椎骨除去などのリスクがあるため手術を伴わない保存的治療である「硬膜外ブロック」が最も効果的な治療となります。硬膜外ブロックは体への負担が少ないことが大きな利点で、非常に安全な選択肢です。
また、硬膜外ブロックはヘルニアが原因でない痛みにも効果があるため、硬膜外ブロックで症状が落ち着くなら、ヘルニアの手術は不要となります。硬膜外ブロックによって痛みが軽減されると、手術に比べ、通常の活動や運動を再開しやすくなり、体の筋力回復や機能回復を助け、生活品質の向上につながります。少なくとも手術を決める前に保存療法である硬膜外ブロックに挑戦してみる価値はあるといえます。

3. ヘルニアに硬膜外ブロックが有効な理由

ヘルニアに硬膜外ブロックが非常に有効な理由は下記の通り。
①炎症や神経の圧迫を軽減！
局所麻酔薬やステロイド薬を硬膜外に注入することでヘルニアの痛みの発生源である神経の周辺の炎症や腫れを減少させます。さらに、痛みの伝達をブロックし、痛みの感覚を軽減させることにより、神経への圧力が軽減され、痛みが緩和されます。
②単なる短期的な痛み止めでなく、痛みの慢性化を防止！
硬膜外ブロックは、急性の痛みの軽減だけでなく、慢性のヘルニアによる症状の管理にも有効です。局所麻酔薬の効果は通常約2時間くらいですが、硬膜外ブロックで神経を一時的に休ませることにより、痛みを慢性化させる仕組みである「痛みの悪循環」を遮断するため、効果が持続します。痛みがあると、その部位の血管が収縮し、筋肉が緊張します。その結果、血液の流れが悪くなり、痛みを起こす物質が生じ、さらに痛みを引き起こします。これを「痛みの悪循環」と呼び、この悪循環に陥ると、症状は慢性化し、もともとの痛みの原因がなくなっても、いつまでも痛みが取れなくなります。
硬膜外ブロックにより、炎症が鎮静化され、神経への圧力が軽減され、痛みが持続的に軽減されます。
★硬膜外ブロックは、手技が複雑で、より高度な技術を必要とする治療法ですが、当院では熟練の経験豊富な医師がどこよりも細い針で施術しますので安心して受けていただけます。

「卵が先か鶏が先か、痛みが先か不安が先か」

1.痛みが先の場合

「卵が先か鶏が先か」ということわざは「どちらが先かわからない」というときに例えとして使われます。心療内科で痛みの治療をしていると、ときどきこの言葉が頭に浮かびます。
痛みが主訴の患者様の中には、‘不安が強まると
痛みが強まる’という方が一定数います。その場合、次のようなことが起きます。
身体が原因で体の一部が痛い➡不安になる➡さらに痛い部分の痛みが強まる➡さらに不安が強まる➡もっと痛みが強まる➡もっと不安が強まる➡もっともっと痛みが…
まるで「無限ループ」のようで、鉄道オタクの私は「環状線」と呼んでいます。

2.不安が先の場合

2.不安が先の場合
‘不安が強まると痛みが生じる’という方もおられ、さらに痛みの問題を複雑にします。
痛み以外に気になることがあり不安が強まる➡明らかな身体の原因はないが体の一部が痛くなる➡痛みに対しても不安になる➡さらに痛い部分の痛みが強まる➡さらに不安が強まる➡もっと痛みが強まる➡もっと不安が強まる➡もっともっと痛みが…
なんだか頭が混乱しそうですね。でもここで注目したいのは、どちらも「最後は同じループになっていること」と、「どちらも自ら痛みのレベルをあげる結果になっていること」です。

3.「環状線」に入っていると気づいたらどうすればいいでしょう？

まずは「次の駅で電車を降りましょう」。そして「落ち着いて考えましょう」。「落ち着かせるために心療内科の薬が役立つ」こともあります。そして「自分はどこからこの環状線に入ってしまったのか」、その「スタート地点を意識」しましょう。
「身体が原因で体の一部が痛いから環状線に入った方」は、身体の治療をしても残ってしまう痛みと冷静に向き合い、残る痛みがありながらもできる仕事の仕方や楽しみ方を探しましょう。
「痛み以外に気になることがあり不安が強まるから環状線に入った方」は、すべての元になっている不安の元を見定めて、必要な対処法や相談の検討をしてみましょう。今回は痛みと不安の関係で紹介しましたが、他にも「痛みが先かイライラが先か」や、「痛みが先か嫌だなが先か」などの仲間もいます。「環状線」に入っていると気づいたら、まずは次の駅で降りてみましょう。

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通信vol.41(「漢方薬の良く効く症例紹介“①膝痛”と“②チック症”」、「心療内科におけるパニック障害の治療について」)　: (2013/03/08)
通信vol.40(「関節アプローチ療法の症例」「心療内科における不眠治療～睡眠薬のお話～」)　: (2013/01/17)
通信vol.39(「わき腹痛・肋間神経痛の症例「抗不安薬のお話」)　: (2012/11/12)
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通信vol.36(「かかと痛の症例」「心療内科の薬について」): (2012/05/09)
通信vol.35(「花粉症の症例」「心理検査」「足底板」): (2012/02/29)
通信vol.34(「自律神経失調症と冷え症の症例」「社交不安障害」): (2012/01/11)
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通信vol.19（「トリガーポイント注射」）: (2009/09/01)
通信vol.17（「アレルギー疾患」）: (2009/03/10)
通信vol.16（「変形性膝関節症②」）: (2009/03/10)
通信vol.15（「冷え性」）: (2008/11/24)
通信vol.14（「更年期障害」）: (2008/11/24)
通信vol.13（「自律神経失調症」）: (2008/09/03)
通信vol.12（「変形性股間節症」）: (2008/07/03)
通信vol.11（「花粉症」）: (2008/04/30)
通信vol.10（「顔の痛み」）: (2008/04/30)
通信vol.9（「頭痛」）: (2008/04/30)
通信vol.8(「足関節痛・足関節炎」）: (2007/10/01)
通信vol.7（「三叉神経痛」）: (2007/08/13)